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きのこ面白情報

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【きのこ面白情報】岩出菌学研究所主任 農学博士 原田栄津子

私のガルガルとの繋がり

きのこなしでは生きていけない。

幼少のころから、きのこは身近な存在で、宮崎県北部はシイタケの原木栽培が盛んな地域であったために、小さい時からシイタケ栽培の手伝いをおこなっていましたが、シイタケにつくナメグジが、シイタケの食感と微妙に重なり合い、強烈な匂いも味もダメで、全く口にできないほどシイタケ嫌いでした。それが、なぜ大好きになってしまったかというと、宮崎大学のきのこを研究している森林化学研究室に入ってからで、自分できのこの菌糸から培養して子実体にするという一連の研究をしていくと、なんて不思議で、奇妙で、可愛い生き物なんだろうと研究に没頭していくうち、このコラムにも登場した飯沢耕太郎先生の言葉をお借りすると、徐々に私の中にきのこの胞子が入りこんですっかりきのこの世界にのめり込んでいました。

修士課程まで研究室できのこの研究を行いましたが、まだまだ、きのこのそばを離れたくなかったようで、青年海外協力隊のきのこ隊員として、チリ国に派遣されました。チリでの2年間は、シイタケとヒラタケの栽培をエルカルメン市の青年達に栽培の技術指導を行うのが私の仕事でしたが、現地に行くと、全く基盤がなく、きのこを食べる習慣のないところでの人材探し、きのこに興味を持った人が集まってからの栽培施設作りで、実際のきのこ栽培を指導するまではなんとか漕ぎつけましたが、チリでのきのこ隊員の期間はあっという間に過ぎてしまいました。

チリできのこ栽培を教えるという目的の他に、私には、もうひとつ目的があり、どちらかといえば、こちらの理由のために派遣国にチリを選んだのですが、インディオのパンといわれる有名なきのこ「キッタリア」を一目みて食べてみたいという願望がありました。現地にいくと、キッタリアはもちろんのこと、今まで見たこともないようなきのこがたくさん。実際に行ってみると実は、南米パタゴニアはきのこの宝庫で、チリの湖水地帯は、風の谷のナウシカに出てくるような菌類が繁殖する原生林の風景が広がります。このため、週末土日になると私の派遣されたエルカルメン市からバスで7時間ほどの森林地帯の国立公園に通っては、きのこを探し月曜日の朝、夜行でエルカルメンに帰ってくるという生活を続けていました。体力だけは、人一倍あったので、とても楽しいきのこ探しの冒険の時期でした。

その中でも、なかなか出会えなかった幻のきのこがガルガル。最初は、市場でその姿を見たのですが、市場で発生場所を聞いてはみるものの、誰も教えてはくれません。それは当り前のことなのですが、丁度、日本の丹波で松茸の発生場所を聞くのと同じようなもので、市場で一番の高値で取引されるきのこであるため、絶対に発生場所を教えてくれません。今だからこそいえるのですが、このガルガルの発生場所を最後に見るために、青年たちの栽培指導要求があるとか、あと数ヶ月後にきのこの栽培施設が完成するとか、適当な理由をつけて、3ヶ月派遣期間を延長させていただきました。そのおかげで、知り合いのインディオの方々に頼み込み、ガルガルの発生場所に漸くたどり着くことができました。ピューマがうろうろしているようなパタゴニアの森林地帯の奥深く、霧に包まれた環境の中で、その姿は、ひときわオーラを放っており、辺りには杏仁の甘く芳しい香りを放っていました。白く輝く花びらような姿をみた瞬間から一目ぼれをしてしまい、その瞬間、このガルガルを私が人工栽培したいと強く感じました。そのときから完全にガルガル一途で、がむしゃらにガルガルの特性を観察してきたように感じます。恋にも近い感情かもしれません。それからも何度かチリにガルガル探しに出かけましたが、なかなか姿を現せてくれないガルガルを見つけ出すのは、至難の技で、いつもスリリングな体験をさせてくれます。

ガルガルを研究してきたおかげで、たくさんの著名な方々と知り合うことができました。去年は、とよ田キノ子さんが主宰される「キノコナイト」に呼んでいただき、みなさんにガルガルの存在を知ってもらいました。憧れの写真家や芸術家の方々のお話を聞くなど普通に生活していたら絶対に会えない方々を、ガルガルは繋げてくれます。ガルガルのイメージキャラクター・ガルガルガールを描いてくれたつつみあれいさんとの出会いで、ガルガルの世界も大きく広がりました。アーティストのときたまさんは、「ガルガルを語ろう.食べよう.」というお料理会を恵比寿で開いていただきました。(今月「写真集食堂めぐたま」がオープンしました。) 地元三重県津市では、ガルガルの香りや歯ごたえを生かしたパスタやスィーツを試作するなど、ガルガルの繋げてくれるご縁で楽しみながら研究することができます。ガルガルに出会えたことで、私の人生は180度変わってしまったと言ってもよいかもしれません。今では、ガルガルなしでは生きていけないというのが現状のようです。

現在は、本来存在するガルガルの良さをいかに引き出すことができるかが私の当面の目標です。常々、ガルガルで皆様の美容や健康を維持することができれば、とても素晴らしいことだと思い、この数年、ガルガルの効果や効能についての研究を続けてきましたが、やはりガルガルには、私たちの健康にとても良い働きをすることがわかってきました。現在三重大学との共同研究を行っており、近々、学術論文にて公表する予定です。また、静岡大学との共同研究にて、骨を強化するGargalolsという成分を含んでいることも判明しています。脂肪の減少を助ける働きや抗酸化成分を多く含むため美肌効果が期待でき、老化を防ぐ働きもあります。ガルガルの可能性は無限大に広がりつつあります。これからも、さらなるNew medicinal mushroom ガルガルの機能性について追及すべく、日々研究の毎日です。また、将来の目標として、南米野生きのこの分類学的調査や貴重な生態系の保護に繋がるような研究をすることで、ガルガルと出会えたチリの自然に何か恩返しができればと思っています。

私の所属する岩出菌学研究所では、美味しいきのこと出会う機会も多く、松茸の美味しさを教わったのも、岩出菌学研究所に勤務してからです。とても贅沢なのですが、発生する環境によって味が変わってくることがわかりました。山の尾根の日当たりの良い場所に発生した松茸はとても、とても甘く、まさにきのこの王様だと感じました。貫禄や美味しさという面では松茸にかなうものはありません。さらに、自分の感覚を研ぎ澄まして、赤松林に潜む神々しい松茸を見つけたときの喜びは、到底言葉では言い尽くせません。

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阿山の尾根に生える甘い松茸、スウェーデンの砂利道からでる固いヤマドリタケ、西表島のうま味が深いオオシロアリタケ、チリの肉厚ロージョ、女神湖の光るハナイグチ、美味しいきのこを求めて世界を巡るのが、私の趣味です。

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最近の憧れのきのこは、カオールのクロトリュフ、アルバの白トリュフ、アフリカの巨大なオオシロアリタケなどで、世界中には、きっと美味しくて、奇妙なきのこ達がたくさん潜んでいることでしょう。これからも美味しいきのこを巡る旅をドンドン楽しみたいと思っています。

原田さん、あなたにとってのきのことは?
私にとってのきのことは、宿主。
きのこの菌糸の先の方から、栄養をもらって生かされていると感じています。
きのこにとっては、全く害にならない程度で生きていきたい。
私は、きのこの寄生菌 Parasiteです。
共生菌になりたい夢も秘かにありますが。。。

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原田栄津子(岩出菌学研究所主任 農学博士)
宮崎県生まれ。宮崎大学大学院農学研究科 農林生産学修了後、青年海外協力隊きのこ隊員として、チリへボランティア派遣。2002年、株式会社岩出菌学研究所入社。現在は、三重大学医学系研究科生命医科学専攻にて、ガルガルを食べてくれるマウスと日々奮闘中。趣味は、美味しいきのこを求めて世界を歩くこと。チリ、パタゴニアの山の中でガルガルに出会いガルガルの魅力に完全に取りつかています。ガルガルスィーツのアイデア募集中。

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環境の変化が大きく疲れを感じやすい4月は、食事からしっかり栄養をチャージして春を元気に過ごしましょう!きのことソーセージに豊富なビタミンB1は糖質の代謝に関わるので、元気に活動するためのエネルギーの補給に役立ちます。また、卵からは良質なタンパク質、菜の花からはビタミンA・C・Eが摂れる、栄養バランス満点の一品です。

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