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きのこ面白情報

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【きのこ面白情報】醤油愛好家 杉村啓

きのこと醤油の不思議な関係?!

こんにちは。杉村啓と言います。醤油とか日本酒とか料理漫画について本を書いたりしています。つい先日も河出書房新社より「醬油手帖」という本が発売されました。

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突然ですがみなさま。きのこに醤油をかけたものはお好きですか。僕はもう、これが大好きなのです。
じっくりと焼いた大きめのきのこに、ぱーっと醤油をまわしがけて、香ばしいきのこの香りと少し焦げつつある醤油の香りがあわさり……ああ、もういくらでも食べられちゃいそうです。

なぜこんなにも相性がいいのかという理由は、実は科学的に証明されています。その秘密は「旨味」にあるのです。味覚のひとつでもある「旨味」は大きく分けるとアミノ酸系の旨味と核酸系の旨味とになります。アミノ酸系の旨味がグルタミン酸、核酸系の旨味がイノシン酸やグアニル酸という物になります。そしてきのこには、グアニル酸がたくさん含まれているのです。

そう、きのこはもともと旨味がたくさん含まれているのですね。きのこの鍋でいいダシが出るのも納得です。ちなみにグアニル酸はきのこの細胞が壊れた方がより多く出るため、一度冷凍してから解凍すると、細胞の中の水分が膨張して細胞壁が壊れることによって旨味が出ると言われています。冷凍に向かないぶなしめじとかえのきたけのようなきのこもありますが、冷凍できるものは一度冷凍することもオススメです。

面白いのは、これらの旨味は、それぞれをかけあわせると、1たす1が2ではなく、10にも20にもなるということです。グルタミン酸の旨味とグアニル酸の旨味を足すと、それぞれの旨味の数十倍にもなるのです。きのこに含まれている旨味はグアニル酸だけではありません。種類によって含まれている旨味もさまざまなので、より多くのきのこを使えば使うほど、料理はおいしくなると思うといいでしょう。

ここでグルタミン酸が豊富に含まれている調味料を紹介しましょう。もう予想がついていると思いますが、それは「醤油」です。というわけでグルタミン酸を豊富に含んだ醤油と、グアニル酸を豊富に含んだきのこはとても相性が良く、おいしい組み合わせとなっているのです。

ちなみにグルタミン酸は昆布に、イノシン酸はかつおぶしに多く含まれています。ダシをとるときに昆布ダシとかつおぶしダシを合わせるのは、旨味の相乗効果を生み出しているという昔ながらの知恵だったのですね。

醬油の中に旨味成分がどれだけ入っているかはラベルに書かれている「特選」とか「特級」という言葉で表されています。きのこと合わせる場合には、なるべく旨味成分の多い醤油がよく合います。濃口醤油の場合は超特選>特選>特級>上級>標準の順に旨味成分が入っていますので、参考にしてみてください。

そんなにも醤油ときのこの相性がいいのだったら、もう最初から組み合わせた調味料があればいいのにと思う方もいると思います。これが、あるんです。

いわゆる「ダシ醤油」と呼ばれているダシと醤油を合わせた調味料の中には原材料に「乾しいたけ」「しいたけエキス」を入れた醤油を使っているものが少なくありません。

例えば、いまはスーパーなどでもたくさんみかける「アサムラサキ かき醤油」はその代表でしょうか。牡蠣ダシの醤油なので原材料にかきエキスが入っているのは当然なのですが、その中に「乾しいたけ」もあるのです。ちなみにかつお(イノシン酸)やこんぶ(グルタミン酸)も含まれていて、この醤油が旨味を重ねに重ねたものであるということがわかります。実際、とてもおいしく、手に入れやすいところからもファンの多い醤油です。

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他には、今すぐ手元から取り出せた醤油の中では岡山県のとうふ工房の「明治38年創業醤油屋のたまごかけ醤油」には吹き出しで「しいたけだし入り」と、ラベルで椎茸が入っていることをアピールしています。原材料には「しいたけエキス」が書かれています。

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和風パスタなど多くの「和風」というメニューが、きのこを使って醤油で味付けをしているものが多いということからも、僕らが抱いている「和食」の根本的なところに「きのこと醤油」があるのは間違いありません。

というわけで、今晩も僕はきのこと醤油をおつまみに、日本酒を飲むのでした。

杉村さん、あなたにとってのきのことは?
きのこは「不思議」な存在です。酵母と同じように真菌ではあるものの、醤油や日本酒の発酵とはまた違う生態なのが興味深いのです。

KeiSugimura
杉村啓(醤油愛好家/日本酒ライター/料理漫画研究家)
日本酒や醤油など発酵物に興味があり、多くのメーカーや蔵元と交流をもち、さまざまな媒体に寄稿している。醤油にはまりすぎて書いた同人誌から始まった「醬油手帖」(河出書房新社)が3月25日に発売された。また、日本酒では「酩酊女子 日本酒酩酊ガールズ」(ワニブックス)ではお酒紹介とコラムを担当する「むむ先生」として活躍。

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