プロアスリートを支える食事に迫る。第67回ノルディックスキー/ジャンプ・二階堂 蓮選手インタビュー
2026.06.01
アスリートへのインタビューを通し、明日への一歩を応援する「Do My Best, Go!」。今回登場するのは、ノルディックスキー・ジャンプでミラノ・コルティナオリンピックに出場され、3個のメダルを獲得した二階堂蓮選手です。第一線で活躍するまでの経緯や、その土台となる食への意識、今後への思いなどをお聞きしました。
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はじめに、ジャンプを始めたきっかけを教えてください。
小学校2年生のとき、小さなジャンプ台を飛んだのが最初です。父はスキージャンプの元選手だったので、最初は父がスタート台の後ろに立って僕の手を持ち、ジャンプの時は手を離して飛ぶという形でした。ジャンプは恐怖心が湧いてなかなかスタートできない子どもが多いですが、僕の場合はすんなりスタートして飛べたのを覚えています。
小中学生の頃はどのように練習されていたのでしょうか。
家の近くにはジャンプ台はなかったので、学校のない土日に札幌まで行って飛んでいました。それ以外の平日は学校が終わった後、家で陸トレをしていました。
ジャンプ台が近くにある少年団の子どもたちと比べると、飛ぶ練習という点ではハンディがあったように思います。その中でも大会で成績を出して、成長できた理由はどのようなところにあったのでしょうか。
父はワールドカップや世界選手権に出た選手だったことが大きかったと思います。家にいるときも父からジャンプのための動き方や筋肉をどこにつければよいか、必要なトレーニングの方法などを教わっていました。そこは他の子と違うところだったと思います。
高校は数多くの選手を輩出した下川商業高校に進みます。どのような3年間だったでしょうか。
競技人生でターニングポイントになった時期でしたね。高校に入ってから、世界ジュニア選手権などに出場することはできましたが、自分の中では納得のいく結果を出せていなかった、むしろ悩んでいた時期が長かったです。
卒業したら企業に所属して競技をすることも目標にしていましたが、高校3年生のときに企業から声はかかりませんでした。本当に悔しくて、最初はジャンプをやめようと思いました。でもいろいろな人からの説得があって、大学に進学して競技を続けようと決めました。
そこで心に火がついて、「見返してやる」という反骨心で取り組みました。その成果が高校3年の冬になってから出始め、成績もよくなっていきました。
高校を卒業後、東海大学に進学しましたが、1年生で中退されています。
そうですね、大学にはジャンプをやるために進学をしましたが、大学生活も楽しみにしていた部分はありました。でもコロナ禍の時期だったこともあって学校には行けずに授業は全部オンラインで、思い描いていたキャンパスライフとは違う形になってしまいました。それもあってジャンプに専念しよう、集中しようと大学をやめる決断をしました。
2022年の北京オリンピックには出られませんでしたが、オリンピックをどう意識していたのでしょうか。
もちろん出場を目指して取り組んでいましたし、自分でも行けるという自信はありました。ただ、代表に選ばれるためにはワールドカップで結果を残さなければいけなかった。そのチャンスをつかむためにコンチネンタルカップを転戦していましたが、なかなかうまくいかず……あと一歩というところでした。北京オリンピックは実家のテレビで観ていましたが、「このメンバーと一緒に戦いたかった」という思いは強かったですね。
北京オリンピックのあった翌シーズンにあたる2022-2023シーズン、日本ビールさんとの所属契約が決まりました。待ち望んでいたスポンサーがみつかり、大会でも成績を残しながら代表入りし、迎えたのがミラノ・コルティナオリンピックでした。大会では最初の種目の個人ノーマルヒルで銅メダル、続く混合団体でも銅メダル、個人ラージヒルで銀メダルを3つのメダルを獲得しました。初めての大舞台で好成績を残せた要因は何だったのでしょうか。
実はオリンピックだからという緊張感はありませんでした。今回の五輪の形式上、ノルディックはノルディックだけの会場でほかの競技とは一緒ではなくて、現地に着いてからも想像していたオリンピックという雰囲気ではなかったです。それもあって普段のワールドカップと変わらない心境で挑めたのかなと思います。いつも通りであったのが良い結果につながったと思います。
ラージヒル銀メダルの後、お父様と抱き合い、涙している光景も印象的でした。
僕がジャンプを始めたきっかけは父でしたし、父が出られなかった五輪だから現地で見てほしいと思ってと連れてきていました。ラージヒルはあと少しのところで金メダルを取れなくて、僕にとっては悔しい試合でした。だから父の顔を見たときに金メダルを取れなかった申し訳なさ、もっといいところを見せたかったとかいろいろな感情があふれてきて、涙が出てきました。
ここからは食生活についてお聞きしていきます。競技生活を続けてこられて、食生活で心がけていることはありますか?
普段から意識しているのはバランスよく食べることですね。シーズン中も、いつもの生活でも、バランスが変わることのないように、偏りのない食事を意識しています。
海外遠征の機会も多いと思いますが、日本と食事の環境もかなり異なるのではないでしょうか。工夫していたことはありますか?
ヨーロッパ中心になりますが、揚げ物が多かったり、主食がそもそも違ったり、肉がメインであったりと、日本とは食の環境は全然違います。ボリュームのある料理も多いですし、脂っこいものも多いので、脂質は特に注意しないといけないなと意識しています。
脂質が少なく栄養価の高い食材としてのきのこが注目されています。普段の食事できのこを食べる機会もありますか?
そうですね、きのこは好きなのでかなり食べています。小さいときから好きでしたね。特にしめじ、椎茸、なめこも好きです。好きな料理だと椎茸のステーキだったり、きのこのパスタ、味噌汁にきのこが入っていると嬉しいですね。
きのこは美味しくて体によく、料理がしやすい所が魅力だと思います。
きのこには腸内環境を整える働きもありますが、ご存じだったでしょうか。
具体的に何が良いということは詳しくは知らなかったのですが、体に良い食材というのは印象としてずっとありました。また、腸内環境については、排便がスムーズになるように食事面でも意識しています。
初めての大舞台を経て、これから思い描いている将来はどのようなものでしょうか。
まだワールドカップでも総合優勝はないですし、今シーズン(2025-2026シーズン)も1勝しかしてないですし、ずっと目標にしている「世界一になる」というのを実現したいと思っています。オリンピック、世界選手権という大きな大会もありますが、毎週試合があって、その成績でシーズンの一位を決めるワールドカップの総合優勝が僕にとっての「世界一」だと思っています。
では、ジャンプを頑張っている、これからジャンプをやってみようかなと思っている子どもたちへのアドバイスをお願いします。
やっぱり「楽しい」だったり、「好き」という気持ちを忘れないでほしいなと思いますね。競技を突き詰めていくと周りが見えなくなってしまうことが結構あると思いますが、そうなってしまったタイミングで挫折してしまう人が多いと思います。自分が何のためにこの競技をやっているのかという気持ちを忘れないで取り組んでほしいですね。
それでは最後に、スキージャンプを頑張っているジュニアアスリートにむけて食事面でのアドバイスをお願いします。
人それぞれなので、僕のアドバイスが正解だとは思わないでほしいですが、アスリートの食生活って「我慢しなきゃいけないもの」というイメージが強いと思います。でも、僕自身は必要以上に我慢するとストレスを感じるタイプで、無理をすることで急激に体重が落ちてしまったり、栄養不足になって病気になってしまったりする人もいます。もちろん競技をするうえで体の管理は大事ですが、自分に合ったやり方を見つけることが大切だと思います。食生活も、我慢するところは我慢しつつ、ストレスになりすぎない形で続けていってほしいですね。
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profile
(にかいどう れん)
2001年5月24日生まれ、北海道江別市出身。
小学2年生のとき、元選手だった父のもとでジャンプを始める。中学3年生のとき世界ジュニア選手権に出場。高校3年生で初めてワールドカップに出場する。2025年11月、ワールドカップで個人初の表彰台となる2位になると2026年1月の大会でワールドカップ初優勝。2026年ミラノ・オリンピックに出場、個人ラージヒル銀メダル、ノーマルヒルと混合団体で銅メダルを獲得。



