Method of Improving Performance

「勝てるメンタル」のカギは自律神経にあり⁉(前編)

2020.03.01
「勝てるメンタル」のカギは自律神経にあり⁉(前編)

トップアスリートは自律神経が最高に整っているといわれます。彼らは大きな大会でベストパフォーマンスを発揮し、結果を残していますが、これにも自律神経が大きく関わっていることをご存じでしょうか? 自律神経とスポーツの関係、試合や大会で持てる力を最大限に発揮するための自律神経調整法などをわかりやすくご紹介します。

■そもそも自律神経とは

人間の身体は、図のように司令塔である脳から中枢神経という神経の太い束が腰部まで伸びており、そこから枝分かれして全身に張り巡らされている神経を末梢神経といいます。末梢神経には「体性神経」と「自律神経」の二種類があり、体性神経は「筋肉を動かす」など私たちが自らコントロールできる働きを司るのに対し、自律神経は意志とは関係なく働く部分を司る神経です。
消化吸収といった日常の働きはもちろん、外部環境の変化に対して身体の内部を一定に保とうとする働きをします。例えば、暑かったら汗を出して体温を下げるといった体温調節や血流のコントロールもしています。
つまり、人間のライフラインを支えているのが自律神経で、24時間休むことなくコントロールしてくれるおかげで私たちの身体は一定のコンディションに保たれているのです。

そもそも自律神経とは

■大事なのは、交感神経と副交感神経のバランス

自律神経は、「交感神経」と「副交感神経」から構成されています。
自動車で例えると、交感神経はアクセルです。交感神経の働きが上がると気持ちは高揚し、血管が収縮して血圧や心拍数がアップ、胃腸の活動量が低くなって「緊張モード」に。副交感神経はブレーキで、血管が緩んで血圧が低下し、「リラックスモード」になります。両者は「日内変動」というリズムに沿って交替で活動します(下図参照)。大事なのは、この2つのバランスです。

自律神経バランスの1日の動き

自律神経バランスの1日の動き

ところがバランスが崩れ、交感神経が過剰に優位になりすぎると、ストレスを感じ、免疫力が低下します。逆に、副交感神経ばかりが優位だと、注意力が散漫になり、ミスが増えます。
夜遅くまで起きていたり、朝バタバタと慌ただしく過ごしていると、自律神経のバランスを崩す原因になります。自律神経のバランスを整えるには、朝型の規則正しい生活をすることが大切です。

自律神経のバランスの乱れ

■スポーツと自律神経の関係

武道やスポーツの世界では「心・技・体」という言葉を使いますが、この3つの要素すべてが整って初めて、いいパフォーマンスができます。
「心」が整うとは、冷静で感情にいらつきがない状態であること。「技」が整うとは、スキルが磨かれていること。そして「体」が整うとは、体が疲れていない状態であること。これらを整えるために重要な働きをしているのが自律神経です。
私はこれまで、スポーツドクターとして一流アスリートへのアドバイスも行ってきました。彼らにとって重要なのは、練習で培ってきたパフォーマンスを大会本番で最大限発揮すること。実力を100から120に伸ばすことも大切ですが、「自分の実力を100%出す」ためのトレーニングを日ごろから行うことも大事なことなのです。

■一流アスリートは自律神経が最高に整っている

高いパフォーマンスを維持するために、キーポイントとなるのが「自律神経」。「交感神経と副交感神経の両方を高いレベルにする」ということが重要です。
試合中は緊張状態にあるので、交感神経が高まっています。試合中、身体にアクセルをかける交感神経が高まることは悪いことではありませんが、交感神経だけが常に高まった状態でいると身体が極度に緊張し、本来の実力を発揮することができません。実力を100%発揮するコツは、気持ちを高揚させながらも、どこかリラックスした気持ちを保ち、冷静でいることです。そのような状態を作るときに注目すべきなのが副交感神経です。交感神経と副交感神経の両者が、とてもよいバランスで働くことにより、パフォーマンスを最大限引き出すことができるのです。
トップアスリートが「他の選手の動きがスローに見えた」「ボールが止まって見える」と話すことがあります。このような極限の集中状態を「ゾーン」と呼び、一流のアスリートは無意識のうちに入ってしまうことがあります。このときの自律神経のバランスは交感神経と副交感神経が1:1。まさに最高の状態になっているといわれています。

後編では、自律神経を整えるためにはどうすればよいのか、トップアスリートの具体例や、皆さんが実践しやすい調整法などをご紹介します。

監修者 小林弘幸(Hiroyuki Kobayashi)

監修者 小林弘幸(Hiroyuki Kobayashi)
順天堂大学医学部病院管理学研究室・大学院医学研究科 教授(併任)、スポーツ庁 参与
順天堂大学医学部卒業後、ロンドン大学付属英国王立病院外科、アイルランド国立小児病院外科での研修医を経て、帰国後、順天堂大学医学部小児外科、総合診療科講座/大学院研究科病院管理学教授、順天堂大学医学部附属順天堂医院・救急プライマリーケアセンター副センター長などを歴任。日本初の便秘外来を開設した腸のスペシャリストでもある。各種研究の中で自律神経バランスの重要性にも着目し、多くのトップアスリートのパフォーマンス向上指導にも尽力、自律神経研究の第一人者として著書多数。
日本体育協会公認スポーツドクター
日本医師会認定健康スポーツ医

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「勝てるメンタル」のカギは自律神経にあり⁉

いつでもベストパフォーマンスを発揮するためには『自律神経を整えること』が一つのカギとなります。いつものルーティンで心を落ち着かせることももちろん大切ですが、普段から自立神経の集まる腸を整えておくことが特に重要です。

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