Method of Improving Performance

ゴールデンエイジが発育発達のカギ(後編)

2020.02.17
ゴールデンエイジが発育発達のカギ(後編)

一度獲得したスポーツ技術は簡単には忘れない、一生の財産になります。そのためには、低年齢(キッズ年代)からスポーツ活動の喜びを知り、多種多様な運動技術を獲得しながら、積み上げていくことが不可欠です。後半はゴールデンエイジでの成長をより充実させるために、知っておきたいポイントを具体的にご紹介します。

■“即座の習得”の準備段階「プレゴールデンエイジ」

《即座の習得》の準備段階「プレゴールデンエイジ」

発育発達から見たゴールデンエイジの概念

出典:JFA C級コーチ養成講習会

この年代は、神経系の発達が著しく、多くの神経回路が形成されます。発達する神経回路に様々な刺激を与えることで、神経回路を張り巡らせることができます。ですから、この時期は鬼ごっこや木登り、ボールを使った遊びなど、多種多様な遊びをすることに意味があります。また、日本では一つのスポーツをやり続けることが一般的ですが、いろんなスポーツに挑戦してみることをお勧めします。スポーツの基礎作りが多面的であればあるほど、後に専門的技術を覚えるのが早いといわれています。

■テクニックと良い習慣を形成する「ゴールデンエイジ」

ゴールデンエイジは、運動するにふさわしい身体へと成長するだけでなく、自分自身の身体を自由自在に動かすことができるようになる年代です。
新しい運動や動作を素早く習得し、いろいろな状況下でうまく対応する能力が高いこの時期に、多面的な運動によって、全身コーディネーション(動きづくり)能力をアップさせていきましょう。この時期に、判断を伴う技術、実践的かつ正確な技術を習得することは、その後のアスリート人生の糧となります。
体幹の安定化を高めるにも良い時期です。体幹の安定は、全身の四肢(手足)の動きの基盤となり、どんな運動においても動きの基礎となります。
また、全身持久力が高まりはじめる時期でもあるので、下記のようなトレーニングがおすすめです。

ゲーム形式のイラスト

状況を判断した適切な技術発揮や実際のゲーム中に必要になる動きながらのプレー、周りを見ながらのプレーの基礎が形成されます。

木登りのイラスト

木登りや川遊び、鬼ごっこは、この時期非常に有効と言われています。

反復練習のイラスト

ドリル形式のトレーニング、反復トレーニングを行うことで
正確なプレーを身につけるのに適した時期です。

■ゴールデンエイジ期の心の成長「失敗から学ぶ」

この頃になると、自己中心的な考えから、周りを考えて行動ができるようになっていきます。小さい頃は“周りの大人の基準”で価値判断をすることが多いのですが、徐々に社会的秩序や道徳的な秩序を維持するための判断が可能になってきて、“仲間集団の基準”が大切になってくるのです。
そのため、この時期に子ども同士の仲間集団に属することは心身を鍛えるうえで重要な意味を持ちます。
失敗することや、仲間からの正直な反応に傷つくこと、仲間と自分を比べて必要以上に劣等感を持ってしまうこともあるかもしれません。そういう時の、周りの大人の役目は、“見守り、励まし、応援すること”。子ども自身の考えで行動する機会を与えて、自立のサポートをしてあげてください。失敗から多くのことを学ぶことで、子どもはたくましく成長していくものです。

■「ポストゴールデンエイジ」に気をつけたい「クラムジー」

「ポストゴールデンエイジ」に気をつけたい「クラムジー」

発育発達から見たゴールデンエイジの概念

出典:JFA C級コーチ養成講習会

ゴールデンエイジ後のこの年代は、スピードやパワーに関する筋肉が発達し始め、全身持久力も発達します。また成長の個人差が大きく、あらゆる面でアンバランスな時期といえます。
発育のスパート期(思春期スパート)にあたり、筋・骨格が急速に伸びたことで身体のバランスが今までとは違ってしまうため、感覚が狂い、習得した技術が一時的にできなくなったり、上達に時間がかかったりといった現象が起こってくるのです。こういったパフォーマンス低下や不調をスポーツの現場では「クラムジー(Clumsy:英語で不器用な、ぎこちないという意味)」といいます。さらに成長障害への配慮も必要な年代であるということを、予め知っておいてほしいと思います。したがってこの時期は、新たな技術を習得するには不利な時期であり、今ある技術を安定させることを重視しましょう。

■女子アスリートにおけるゴールデンエイジ

成長時期には性差があり、一般的に女子のほうが2歳ほど男子よりも早いといわれています。小学校の高学年に近づくと、男子よりも身体が大きくなる女子が出てきますが、これは第二次性徴に伴う身体(特に筋/骨格系)の発育発達のスパート期が、男子よりも女子のほうが早く訪れるためです。ですから技術習得に最適なゴールデンエイジも、女子のほうが早く訪れるといわれています。したがって、育成期の指導にあたる指導者は、こういった知識を持っておくことが必須であり、そのうえで子どもたちを十分に観察し、一人ひとりにあった個の育成が重要であることを理解していただきたいと思います。

■一人ひとりの個性を発揮できるように

子どもにはみな個性があります。発達段階も一人ずつ違いますから、それぞれに合った働きかけが重要です。一人ひとりが個性を発揮できるように、ゴールデンエイジで基本をしっかり身に付けてほしいと思います。そのためには様々な経験をすること。これは社会的な面でも同様です。
近年、社会環境の変化(外遊び・集団遊びの減少、家庭環境の変化、強制されない自由なスポーツの減少、早期の専門化や偏った取り組みなど)により、子どもたちが様々な経験をする機会が失われつつあります。積極的に様々な活動に参加し、自分の世界を広げていきましょう。家族旅行や友達同士での遊び、地域の行事などにも積極的に参加して、たくさんのものを獲得していきましょう。

監修者 吉村雅文(Masafumi Yoshimura)

監修者 吉村雅文(Masafumi Yoshimura)
名門クラブチームの枚方フットボールクラブ(大阪)に高校まで在籍し、順天堂大学でプレー後、同大大学院へ進み、サッカー部コーチを務める。卒業後は同志社大学、東京電機大学で教鞭をとり、2000年から順天堂大学へ。指導者としては、1996年にオランダへのコーチ留学を経験。2014年まで順天堂大学蹴球部監督として指揮を執るほか、2013年のユニバーシアード競技大会で日本代表監督としてチームを率い、銅メダルを獲得している。全日本大学サッカー連盟技術委員長、関東大学サッカー連盟技術委員長などを歴任。
また2009年には総合型地域スポーツクラブ「NPO法人レーヴェン」を創設。順天堂大学さくらキャンパスをベースに、学生が中心となって運営する同クラブは、世代を超えた参加者とともに地域社会に貢献している。
順天堂大学スポーツ健康科学部長 教授Ph.D。専攻はコーチ学、トレーニング科学。

今月の菌勝メシ

ゴールデンエイジが発育発達のカギ

発育発達のカギといわれる『ゴールデンエイジ』と呼ばれる時期にアスリートの土台となる基礎のプレーを習得することはもちろん重要ですが、身体づくりの基本となる栄養をバランス良くきちんと食事から摂ることが大切です。エネルギーや筋肉の素となる三大栄養素ときのこに豊富な潤滑栄養素を意識した食事がオススメです。

きのこの彩り卵とじ牛丼

きのこに豊富な潤滑栄養素はごはんやお肉に含まれる三大栄養素を効率よく働かせて、エネルギーや身体づくりを後押しします。彩りの良い野菜を入れることで栄養バランスもアップ。たくさん食べてしっかり成長できる身体を作りましょう。

レシピイメージ きのこの彩り卵とじ牛丼

【協力】NPO法人ジュース(JWS)

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