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10月の特集テーマ
「薬膳の魅力」

身体も生き方も整える「薬膳」の魅力

2017.10.01

10月は「ピンクリボン月間」。この乳がんの早期発見・早期治療を世界的な規模で啓発する取り組みに合わせ、「女性」と「子ども」の健康と幸せを考えていきます。トレンドコラムでお話をうかがったのは、「薬膳」のプロフェッショナル・瀧本靖子さんと、子育てに詳しい竹内エリカさん。今週の「きのこで菌活。」コラムでは、毎日の食事を見直すことからの健康づくりについてご紹介していますが、今週の「トレンドコラム」では、中国伝統の医薬学に基づいて「食」を通して健やかな体づくりを促す薬膳の魅力と家庭での取り入れ方をお届けします。

10月は「ピンクリボン月間」。この乳がんの早期発見・早期治療を世界的な規模で啓発する取り組みに合わせ、「女性」と「子ども」の健康と幸せを考えていきます。トレンドコラムでお話をうかがったのは、「薬膳」のプロフェッショナル・瀧本靖子さんと、子育てに詳しい竹内エリカさん。今週の「きのこで菌活。」コラムでは、毎日の食事を見直すことからの健康づくりについてご紹介していますが、今週の「トレンドコラム」では、中国伝統の医薬学に基づいて「食」を通して健やかな体づくりを促す薬膳の魅力と家庭での取り入れ方をお届けします。

瀧本靖子さん
教えてくれたひと
瀧本靖子(Yasuko Takimoto)中国医学研究家、国際中医師、国際薬膳師、管理栄養士

実践女子大学家政学部食物学科管理栄養士専攻卒業後、漢方と食事で病気の治療をする病院の食養内科に勤務。その後、老人福祉施設で管理栄養士として勤務。その頃、中医学の面白さに魅了され、中医学、薬膳を学ぶ。2005年4月に横浜・青葉台で「薬膳料理レストラン心味」を開店。2006年より「薬膳教室心味」として今に至る。東京・横浜の教室を中心に、カルチャーセンター、大学の生涯学習センター、各地サロンで薬膳を教えるほか、各種イベントやレストランにおけるメニューの監修などを手がける。著書に『免疫力を上げる魔法のスープ』(PHP研究社)、『お酒と楽しむ薬膳ごはん』(学陽書房)がある。

何千年もの歴史に育まれた薬膳は、
一人ひとりに合わせた“オーダーメイド”

瀧本さんは大学で管理栄養士の資格を取得し、病院の食養内科などでの仕事を通して、「薬膳」とそのベースとなる中国伝統の医薬学「中医学」を知り、瀧本さん自身が、薬膳によってアレルギーやアトピー、重い生理痛が改善したことで、その効果を実感。その魅力を伝えるために、現在は書籍や雑誌での執筆活動のかたわら、「薬膳教室心味」「薬膳実践学院」で基礎的な理論やレシピを多彩なテーマで伝えています。

「私の教室で学んでいる方は、30代から50代の女性が中心ですね。多くの方が、子どもや家族の健康のためや自身の不調を改善のために興味を持って受講されています。漢方などは昔から日本人に親しみ深いものですが、ここ数年は、だんだんオシャレなイメージにもなっていて、漢方薬をハーブのようにガラス瓶に入れて販売しているショップもありますし、カフェなどでも薬膳メニューをよく見かけるようになりました。小泉今日子さんが漢方薬を愛用していることが雑誌などで紹介されたり、光浦靖子さんが『国際中医薬膳師』という資格を持っていることも話題になりましたし、注目度は高まっているようです」

たくさんの人が注目している「薬膳」。
なんとなく“健康に良さそう”というイメージがありますが、そもそも薬膳とは、食材や生薬がそれぞれ持っている効果を体質に合わせて組み合わせ、料理として摂るというものです。その魅力は、何千年にもわたって培われた中医学の理論に基づいているからこその「奥深さ」にある、と瀧本さんは言います。

「中医学は本当に奥深く、ひとつのことを理解すれば、次の段階の疑問が湧いてくる。知れば知るほどわからなくなるというか(笑)。薬膳では、心も身体もつながっていて、人間を全体として考えていくんです。心と体のバランス、食材の性質や効能、体を構成する『気』や『血』や『津液』(※1)、ひとくちに薬膳といってもたくさんの要素があります。体質や体調によって気持ちや考え方も変わります」
※1 津液(しんえき)…人体中の正常な水液の総称。唾液、胃液、涙、汗など。

そもそも人には生まれ持っての性質があり、置かれている状況も一人ひとり異なります。それに合わせて、心身のバランスを食材で整えていく薬膳は、まさに“オーダーメイド”。つまり、薬膳によって健康を整えようとすることは、自分自身の状態を深く理解することにもつながります。

暮らしに薬膳を取り入れて、健やかに生きる

同じような不調を感じていたとしても、症状や体質を分析していくと、薬膳による改善方法が異なる場合があります。たとえば「冷え」は多くの女性にとっての悩みのタネですが、血行不良による冷え症の場合もあれば、体温そのものが上がりづらい人もいて、改善するための方法はさまざまです。症状を改善するためには、中医学の観点からの食材がもつ効能を組み合わせて、薬膳のレシピを考えていきます。
【薬膳における「冷え」の考え方】


「この『中医食材辞典』には、食材ごとに性質や味、効能が書かれています。基本的には寒・涼・平・温・熱の5つの性質に分類されていて、寒・涼は熱を取ったり解毒する作用が、温・熱は身体を温めて気血の流れを向上させる働きがあります。さらに味や作用の方向性、身体のどの部位に作用するか。こういった食材の特長を、体質に合わせて組み合わせていくわけです」

さらに、身体を構成する五臓(※2)や、身体と密接なつながりがある五季節(※3)など、深く学ぼうとすれば、知っておくべきことは尽きません。だからこそ、瀧本さんは現代人のライフスタイルや体質に合わせて理論と料理の両面から指導し、ライフスタイルや生き方にまでつながる価値観をも伝えようとしています。
※2 五臓…心・肝・脾・腎・肺
※3 五季節…春・梅雨・夏・秋・冬

「たとえば、ピンクリボン運動は乳がんの啓発運動ですね。中医学では、乳がんは食生活の乱れのほか、ストレスが原因である場合も多いと考え、環境が変えられないとしたら、『ストレスに強くなる』『ストレスを上手に逃がせるようになる』食事をオーダーメイドで作ると良いと考えます。中医学では、ストレス状態は体内の気の巡りが乱れている状態ですから、気の滞りを取り除く働きの『玫瑰花(まいかいか)』というバラ科の花の蕾を乾燥させたものを取り入れたりします。香りもいいですし、ハーブティーのようにお茶として飲むこともできるので、取り入れやすいですよ」

そのほか、おすすめしてくれた食材は「ジャスミン」。こちらも気持ちを落ち着かせる効能があります。ちなみに、中医学では、きのこは消化不良や胃痛、デトックスなどに効果があるとのこと。このように、中医学の理論を深く知らなくても、まずは症状や体質に合わせて食材を選び、日常の食事に取り入れるだけでもOKなんです。

瀧本さんがお料理教室の生徒さんたちによく尋ねられるのも「ストレス」や「不妊・月経異常」が多いのだそう。今回は、女性におすすめの薬膳食材も少し教えていただきました。

薬膳食材 効能
1 玫瑰花(まいかいか) ストレス解消に
2 茉莉花(ジャスミン) 気持ちを落ち着かせる
3 枸杞子(クコ) アンチエイジング、老眼、眼精疲労
4 山芋 アンチエイジング、胃腸を元気にする
5 ラム肉 身体を温める力がとても強い。寒がり、冷え性の人に
6 黒砂糖 身体を温める力が強い。冷えから来る月経痛などに
7 白きくらげ お肌の保水力を高める、乾燥からくるしわに

 

「薬膳すべてと言うとすぐに理解できるような簡単なものではありません。でも、不調や体質が改善して健康になることはもちろん、薬膳をきっかけに自分自身のことを知り、自分には何が必要で、何が必要でないかを見極めることができれば、きっと、もっと生きやすくなるはず。ぜひ暮らしに薬膳を取り入れて、健康で豊かな生活を送ってほしいですね」

【次週は、子どもや家族のために薬膳を取り入れ、楽しむための方法をご紹介します】

【今週更新!きのこで菌活。】

家庭での食事に、一人ひとりの症状にあわせた「薬膳」を取り入れること、そして、それにあわせてきのこを取り入れた食事からも、乳がんや生活習慣病予防を意識してみませんか。

今週の「きのこで菌活。」を読む ▶︎

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