“早産”のリスクと予防方法とは?妊娠中期から後期に気をつけたいこと
2025.01.20
妊活から妊娠、出産、産後まで、マタニティ期に大切にしたいことを食事のポイントとともにお届けする本コーナー。今回は、妊娠中期〜後期に注意しなければならない「早産」をテーマにお届けします。
妊娠中期から後期は体調が安定しやすい一方で、お腹がますます大きくなり、身体の痛みやお腹の張りなどの症状に悩む妊婦さんも多い時期です。そして、出産予定日より早く生まれてしまう「早産」のリスクもあります。
そこで今回は、産婦人科医で浜松医科大学名誉教授の金山先生に、妊娠中期から妊娠後期の身体の変化、早産の原因や予防法についてお聞きしました。
INDEX
体調は安定するも身体の痛みに悩む時期

まずは、妊娠中期から後期にかけての妊婦さんの身体の変化や、この時期に聞かれる悩みについて教えてください。
妊娠中期、特に妊娠20週から27週は、胎盤形成がほとんど終わり、つわりもおさまります。そのため安定期とも呼ばれ、つわりだった人にも食欲が戻り、体調も比較的良い期間になります。
妊娠28週から40週は妊娠後期にあたり、体重も増えやすく、お腹もますます大きくなります。
妊娠中期~後期はこのような変化があるため、肩こりや腰痛、恥骨痛などの身体の痛みや、お腹の張り、足のむくみなどに悩まされる妊婦さんが多くなります。特に生活に支障が出るほど腰痛や恥骨痛がひどい妊婦さんには、一時的な処置にはなりますが専用の骨盤ベルトを巻くなどの指導をしています。
また、妊娠中期からは体調が安定しやすい一方で、妊婦健診の間隔は短くなります。具体的には、24週以降は2週間に1回、36週以降は1週間に1回のペースです。妊婦健診の頻度が増える理由は、何か異常が発生したときに、それが入院するような病気となる可能性が大きいためです。特に30週を過ぎるとより注意が必要になるため、体調が良くても先延ばしにしたりせず、定期的な健診を大切にしてください。
妊娠中期から後期で入院するような病気というのは、具体的にどのような症状が多いのでしょうか?
妊娠中期から後期に入院する病気で一番多いのは切迫早産です。そして、2番目が妊娠高血圧症候群や胎児発育不全。3番目は妊娠糖尿病になります。
妊婦さんが入院をしている場合、6〜7割は切迫早産です。切迫早産とは早産になりかかっている場合を指し、早産になる前に治療をすることで、早産を遅らせることが目的です。
一般的に早産は、22週から36週6日までに産まれることを指しますが、早産で産まれてくる赤ちゃんは低体重児の場合がほとんどです。そして低体重児は週数が少ないほど合併症になりやすく、長期的には後遺症が残りやすいとされます。特に妊娠20週台の切迫早産は細心の注意が必要になるため、入院し、治療することが多いのです。
切迫早産の原因は「絨毛膜羊膜炎」
では、切迫早産の原因は何でしょうか?
切迫早産の最も多い原因は、「絨毛膜羊膜炎」です。これは、胎児を包んでいる卵膜への細菌感染により炎症が起こっている状態を指します。この卵膜の細菌感染は、腟の細菌感染によるもの。つまり、細菌感染した腟の炎症が子宮の入口へ、さらに悪化すると卵膜まで広がってしまうのです。
そして、卵膜から臍帯(へその緒)にまで感染が拡大すると、赤ちゃんにも感染してしまいます。そうなると赤ちゃんが危険な状態になりますから、帝王切開などの人工早産をしなければなりません。そのため、切迫早産で入院している妊婦さんは、卵膜が感染している「絨毛膜羊膜炎」の状態の方が最も多いですね。
腟の細菌感染から切迫早産の原因となる「絨毛膜羊膜炎」が引き起こされるのですね。では、腟の細菌感染の原因や、予防方法を教えてください。
腟の感染症の原因の多くは、妊娠によるホルモン変化によって、腟内の乳酸菌が減少することです。通常、健康な人の腟内は乳酸菌が豊富で雑菌が繁殖しにくい状態ですが、妊娠週数が進むにつれて乳酸菌は減少し、反対に雑菌は増えやすくなります。
そのようなリスクを抑えるためには、まず身体の免疫機能を高めなければなりません。免疫機能を高めるには、足や手などの冷えを防ぎ「末梢循環」を良くすることが大切です。栄養バランスの良い食事や、適度な有酸素運動、さらに、しっかりと質の良い睡眠を意識して、末梢循環の促進をしましょう。
食事の面では、「免疫の要」とも呼ばれる腸内環境を整えることが重要です。腸には免疫細胞の約7割が存在していますので、きのこなど食物繊維の豊富な食材を積極的に摂ることで、全身の免疫力を高めることに繋がります。特にきのこには、直接腸の免疫細胞に働きかけると言われるβグルカンが含まれていたり、免疫機能に関わる腸の「短鎖脂肪酸」を増加させたりすることもわかっています。また、血行を良くする効果をもつ「ナイアシン」や、糖質を代謝することで熱の産生を助ける「ビタミンB1」も豊富に含まれていますので、積極的に取り入れてほしいと思います。

「安静時のお腹の張り」や「おりものの変化」を感じたら受診を

切迫早産は、妊婦さん自身で気づくことはできるのでしょうか?
妊婦さん自身も、お腹の張りやおりものの変化で気づくことができます。まずお腹の張りについてですが、問題ないお腹の張りと切迫早産のよる張りには違いがあります。例えば、座っている状態から急に立ち上がったり、階段の登り降りをしたりすると、妊婦さんであれば誰でもお腹の張りを感じることがあります。また、足が冷えた状態でも、お腹が張りやすいと思いますね。
一方で、切迫早産のお腹の張りは、安静にしていても定期的に張るような状態です。具体的には、横になっていても、15分に1回、20分に1回など定期的にお腹全体が硬くなるような張りを感じたときには、切迫早産の可能性が高いと言えます。
また、切迫早産の原因となる腟の感染・炎症が起きているときには、おりものも変化します。乳酸菌が豊富な良い状態のおりものは、白いどろっとした飲むヨーグルトのような性状です。ところが、腟炎の症状がある場合は、黄色くなったり、逆に透明になったり、チーズ状の塊がでるようなおりものが見られます。定期的なお腹の張りや、おりものの変化があらわれたときには、ぜひ病院で診てもらってください。
お腹の張りやおりものの変化以外に、妊娠中期〜後期で気をつけた方が良い症状はありますか?
妊娠中期~後期の出血には重大な病気が隠れている場合が多いので、出血があった場合は夜中であってもすぐに受診をしましょう。どのような出血であっても、とにかく病院へ行ってほしいと思います。
出血があるとどのような病気が考えられるかというと、もっとも怖い代表的なものは「胎盤早期剥離」です。これは、胎盤が妊娠中に剥がれてしまい、赤ちゃんだけでなく妊婦さん自身も亡くなるリスクが高くなる恐ろしい病気です。他には、前置胎盤や切迫早産による出血もあります。胎盤早期剥離や前置胎盤は母親の命に関わる病気ですので、「妊娠中期から後期に出血したら、即受診すること」は、ぜひ心に留めておいていただきたいですね。
早産等を予防し、母子ともに安全な出産を行うためには、日々の食事や運動習慣、定期的な妊婦健診が欠かせません。決して無理をせず、ご自分の身体を大切にしながらお過ごしいただくことで、お腹の赤ちゃんも健やかに成長することと思います。ぜひ、毎日を前向きに、健康に過ごしていただけたらと思います。
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