【きのこ面白情報】とよ田キノ子さんコラムVol.10

巨大きのこの森へ

こんにちは。
とよ田キノ子です。

夏休みも終わりましたが、まだまだ暑い日が続きますね。
暑さが和らいでくると、いよいよ秋のきのこの季節到来！という気になってきます。
スポーツ、行楽、食、読書…と、活動がしやすくなるこの時期、
巨大きのこが登場する冒険に出かけてみてはいかがですか？

まずご紹介するのは、『Voyage au centre de la terre（地底旅行）』。
“SFの父”であるフランスの作家、ジュール・ヴェルヌが1864年に発表した作品です。
英題は『Journey to the Center of the Earth』。
2008年に3D映画として公開されたのも記憶に新しいですが、
東京ディズニーシーのアトラクション『センター・オブ・ジ・アース』と言ったほうが
わかりやすいかもしれませんね。
地底探検に出かけた主人公たちが大空洞に到達すると、
そこには海や巨大きのこの森、絶滅したはずの古代生物たちが…。
巨大きのこは閉ざされた謎の地下世界を演出するには、最適なモチーフだったように思います。
ただでさえ不思議な生き物であるきのこが巨大化して森になっているなんて、
当時の人々はどのように感じたでしょうか。
きっと現代の私たち同様にワクワクドキドキしながら、
「巨大きのこの森に行ってみたい！」と思ったことでしょう。
（上の写真はペーパーバック版『地底旅行』と、それをモチーフにしたフェーヴ2種。）

さて、次にご紹介するのは『Le Voyage dans la Lune（月世界旅行）』です。
1902年、映像の魔術師と呼ばれたフランスのジョルジュ・メリエスによって制作された
モノクロ・サイレント映画で、世界初のSF映画とされている作品です。
大砲で月旅行に出かけた学者たちが探索中に月人に出会うという内容で、
飛ばした砲弾が月の顔に刺さるシーンはあまりにも有名ですね。
ストーリーは、ジュール・ヴェルヌの作品を組み合わせてアレンジしたものとされています。
月面に着いた学者一行は、地下へと足を踏み入れます。
そこで見たものは、地下空間に生える巨大なきのこたちだったのです。
持ってきていた傘を開いて立てかけると、たちまちきのこに変身！
歴史的価値のある作品にきのこが登場しているだなんて、なんだか誇らしいですね。
加えて、この映画が世界最古の“きのこ映画”と言っても過言ではありません。

実は、この作品には長い間行方不明となっていた着色版がありました。
それが1993年に偶然発見され、デジタル修復作業を施されたものが、
昨年2011年のカンヌ国際映画祭にて上映されました。
その際、同じフランスのアーティストであるAIR（エール）によってBGMもつけられています。
（上の写真は今年発売されたAIRのアルバム『Le Voyage Dans La Lune（月世界旅行）』。
全世界7万枚限定の初回盤は、この着色版『月世界旅行』が収録されたDVD付きです。）

また、今年はこの『月世界旅行』の誕生から110年ということで
着色版の修復作業を追ったドキュメンタリー『メリエスの素晴らしき映画魔術』と共に
本作が全国5箇所の劇場で現在上映されています。
世界最古のきのこ映画をスクリーンで観られるこのチャンス、
110年の時を超えたメリエスの魔術を、その目で確かめてみてはいかがでしょう。

さて、今回は巨大きのこのシーンを中心にご紹介してきましたが
あなたなら、映画、書籍、アトラクション、劇場、どの入口から冒険にでかけますか？
秋の夜長の過ごし方として、巨大きのこの森を冒険するのも楽しいと思いますよ。

【関連】
■月世界旅行＆メリエスの素晴らしき映画魔術オフィシャルHP

とよ田キノ子
アートディレクター、グラフィック＆ウェブデザイナー、きのこグッズコレクター。
2007年に“キノコ病”を発症し、以後「とよ田キノ子」名義で活動を開始。
キノコグッズコレクションの展示や、キノコをモチーフにしたイラスト作品展、
キノコイベント等を開催。
2011年9月、グラフィック社より出版された『きのこ（乙女の玉手箱シリーズ）』を監修。
日々、キノコの魅力を伝える“胞子活動”を行っています。
信州きのこの会会員。

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