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まだ見ぬきのこを求めて
全国の山々へホクトの商品開発の根幹となるのは、きのこ総合研究所だ。おいしさを求め、尽きることのない品種改良はもちろん、新品種の開発、原菌や種菌の品質管理、栽培技術の開発という役割を担っている。
「これらを一貫して行っているところは当社だけ。販売後もお客様の声をフィードバックし、改善を行っています」と話すのは開発研究部・部長の大内謙二。
きのこづくりの起点は山の中。北海道から九州まで全国の山に赴き、野生のきのこを採取して交配を重ねていく。
「市販品種の交配が一般的ですが、材料が同じでは似たようなきのこしか生まれません。だからこそホクトは独自の菌(きのこ)を作るために原種にこだわる。山はまさに宝の山ですね。ただ、野生のきのこは味も色も形も異なりますし、安定性に欠けます。ホクトのきのこ栽培では10万本の菌を植え付けたら100日後に同時に均等なきのこが出来上がる、そんな安定生産を目指して生産現場と切磋琢磨しながら研究を重ねています」。
前例のないことに取り組む姿勢が斬新な商品を生み出す。ホクトでは、現在主流になった純白のエノキタケ、ヨーロッパから複数の菌を入手して編み出したエリンギなど、新たなきのこを次々と生み出してきた。
「マイタケも独自の栽培システムを構築しました。種菌も、システムも新しく作るのがホクトの特長。販売に至ったきのこも、さらに良いものにするために品種改良を止めることはありません」。
日本、そして世界に発信するべく、次世代のきのこも開発しており、マツタケやポルチーニなど、栽培が難しいきのこの研究も成果が出つつある。
「様々なきのこの研究に取り組んでいますが、根本にあるのは消費者です。研究を続けていると変わったものを作ろうという方向にいってしまいがちですが、目的は消費者に喜ばれる商品を作ること。それを忘れてはいけません」。
きのこへの追求が
健康維持の貢献にも商品開発と平行して取り組んでいるのが、きのこの薬理効果の研究。学術的に健康効果を解明し、社会への貢献を目指している。
「きのこ=健康というイメージはありますが、もっと健康食品としての知名度を高めたい。その一環として、営業や企画の社員と相談し、ブナシメジのパッケージにオルニチンの強調表示を付け加えてもらうことにしたんです」。
ブナシメジには、シジミに多いという栄養素オルニチンがシジミの7倍も含まれている。一般的に知られていない情報を消費者に知ってほしいと、営業サイドへと提案した。
「私が常日頃大切だと思っているのは、“まつたけの心得”。松の根とマツタケ菌糸の共生のように、まきこんで、つながって、たすけあう。成果を出すためには、研究所だけではなくすべての部署とつながっていく必要があると思っています」。
きのことホクトについて熱く語る大内の目は輝いている。きのこ総合研究所の探求が、途絶えることはない…。