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機械化が進んでも
人の手がきのこを育むきのこの生産機能を果たしているのが、全国各地にあるきのこセンターだ。研究所から納品された原菌は、ここできのこになるまで一貫して育てられ、包装されて食卓へと届けられる。
「まずは研究所で作られた原菌から種菌を作ります。そして、様々な原料と水を混ぜてきのこの栄養源となる培地を作り、ビンに詰める。殺菌後に種菌を植え付けて培養室へ。きのこの菌に刺激を与えてから、生育室で大きくなるまで育てていくんです」。
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清水勝典が所長を務めるきのこセンターでは、1日10万パックのエリンギを出荷。工場では機械化が進んでいるものの、きのこ栽培の要となるのは人の手、と職人の鋭い感覚であり、妥協しない姿勢が肝心だと語る。
「きのこは生きものなので、とてもデリケート。温度が1℃違うだけで、うまく伸びなかったりする。季節や天候によって環境は変わるので機械の設定を調整したり、メンテナンスも必要です。衛生面において薬剤は使えないので、一部屋で10万本きのこをつくる生育室は、きのこを収穫するたびにすべて手作業で拭き掃除をしています。きのこセンターでは、培養など社員一人できのこに集中する仕事もあれば、包装など多くの準社員を指揮する部署もある。きのこ、人、機械のすべてに目を配り、いい関係といいきのこを育む現場なんです」。
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日々の気付きと連携で
安定生産へ -
工場において最大のミッションは、安定生産である。ホクトのきのこは通常100gのパックだが、容量の異なる特注品を営業からオーダーされることもあり、変則的な注文に応えながら、常に安定的な量と高品質を保たなければいけない。研究を重ねて作り上げた優れた原菌を使っていても、経時変化によってきのこの調子が悪くなることもあるため、日々の観察が欠かせない。
「単にきのこを作るだけなら難しくありません。けれど安定的に作るのが難しい。きのこの声に耳を傾け、ささいな変化に気付いて、すぐに行動に移せるか。生産では[気付き]が大切なんです」。
問題が発生した場合は、研究所や他のきのこセンターと情報交換を行いながらすぐに対応。また、情報は研究所へとフィードバックされ、再び品種開発に役立てられる。
「私たちは、高品質なきのこを安定的に作るだけ。やるべきことをしっかりとやっていれば、あとは営業が結果に結びつけてくれるし、お客様に喜んでもらえるはずですから。って、それが簡単ではないんですけどね」。
常に100点のきのこを届けるため、それを支える社員が成長できるシステムづくりにも取り組んでいきたい、と清水の夢は絶えることはない。