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トレンドコラム

涼を味わう日本の知恵とは、“見えないものを意識する”こと。

音で涼を味わう「風鈴」、見た目にも涼しげな「打ち水」など、日本には昔から涼を感じるための工夫がたくさんあります。クーラーの効いた部屋で過ごすのはもちろん快適ですが、その反面、体調を崩してしまうことも。今週の「きのこで菌活。」では、熱中症の原因と、熱中症対策のポイントである”美腸づくり”について紹介していますが、トレンドコラムでは、涼を感じるための日本の伝統的な風習をご紹介します。日本の行事・歳時記研究家の広田千悦子さんが教えてくれたのは、五感をフルに刺激すること。そのコツとは一体何でしょうか? 夏本番の今週は、2回更新でニッポンの夏おすすめ情報をお届けします。

 

—————— 教えてくれたひと ——————

広田千悦子

広田千悦子 (Chieko Hirota)

日本の行事・歳時記研究家。日本の行事、季節の愉しみ、和のこと、和服、縁起物など、日々の暮らしの中にある“たからもの”を絵と文で綴る。うつわ、ことばの作家。新聞や雑誌などで連載多数。ロングセラーとなった『おうちで楽しむにほんの行事』(技術評論社)、『知っているとうれしいにほんの縁起もの』(徳間書店)、『ほんとうの和の話』(文藝春秋)など、著書は25冊以上。オフィシャルサイトはこちら

 

由来や理由を知ることでさらに“涼”を味わえる

S&Sスタイル

日本の夏の風物詩といえば、まず思い浮かぶのが「風鈴」です。このコラムの1回目でもお伝えしたように、「由来」を知ることがより深く味わうポイントだと広田さんは言います。風鈴は涼しげな「音」を楽しむためのものですが、日本では古くから「音には力が宿る」と信じられてきました

「昔は、風鈴の音が聞こえるところには悪いことが起こらない、なんて言われていましたね。リーンと鳴る高い音は不思議と涼を感じさせますが、古くは魔除けの意味合いもあったんです。直接的に身体を冷やすだけではなく、五感を使って涼を感じるのは心地いいものですよ」

風鈴だけでなく、打ち水や金魚鉢、扇子など、日本の夏には涼を感じる工夫がたくさんあります。その多くは、五感を使って感じるもの。たとえば打ち水には、気化熱で地表の熱を発散するという効果に加えて、濡れたところを目にすることで、視覚的にも涼しさを感じることができます。

扇子

「音や景色が、記憶の中の涼しいイメージと結びつくことで、実際に涼しく感じられるのは不思議なことですが、五感を刺激することで、もともと人間が持っている『感覚が働く』感じも心地いいのだと思います。それに、たとえば扇子は、実際に風で涼をとること以外に、その形が末広がりであることから縁起物でもあるんです。五感を刺激したり、その由来に想いを巡らせることで、よりものごとの奥行きが感じられるところも、日本の伝統を暮らしに取り入れる大きなメリットではないでしょうか」

わらうま

七夕やお盆に飾るわら馬には災い除けや神さまの乗り物という意味合いも。

 

現代的な暮らしに日本の伝統を取り入れるには

夏の伝統的な風習で涼を感じるのはとても素敵なことです。とはいえ、年々気温が高くなっている日本で夏を過ごすには、クーラーなど冷房器具は欠かせません。現代的な生活に、日本の伝統を上手に取り入れるためにはどうすればいいのでしょうか?

「私自身、暮らしに日本の伝統を取り入れていますが、日本の古い風習を無理に残そうとしているわけではないんです。現代の暮らしはより快適に過ごせるように工夫を凝らした結果ですから、もちろんクーラーを使ったっていいんです。要は、バランスを考えることが大切なのだと思います。夏になれば浴衣を着てお祭りに出かけるように、伝統が調度よいバランスで息づいていると思うんです」

「人が必要だと感じるものが続いていく」というのが広田さんの考え。浴衣も風鈴も必要があるから残っていて、五感が刺激されてこころが動く、これは昔も今も日本人の大好きな感覚です。そういう暮らしから遠くなっている、と感じたらまずは興味のあることを取り入れてみて、いいなと思ったら、より深く知っていくのがいいのかもしれません。そして、夏の暑さをしっかりと肌で感じることは、四季がある日本ならではの楽しみのひとつです。

「たとえば、夏祭りは無病息災の祈りが起源だと言いましたが、春や秋のお祭りは、豊穣を祈るためのもの。日本の伝統行事は、1年間を通して季節の節目を知らせるという意味合いがあるんです。季節の移り変りを感じることで感覚が鋭くなっていきますし、自分の内面をはじめとした『目に見えないもの』を意識するきっかけにもなりますよね。日本の夏を楽しむことは、きっと、自分自身を豊かにすることでもあると思うんです」

祭り

 

趣があり、健康的で、奥ゆかしい……。そんな日本の古き良き文化は、日本だけでなく海外からも注目を集めています。今年の夏は、自分に合う形で”日本の涼み方”を取り入れてみてはいかがでしょうか?もっともっと暮らしは豊かになり、夏の楽しい思い出が増えるかもしれませんよ。

 

【次回は夏の日本ファッション、「浴衣」についてご紹介します。お楽しみに!】

 

【今週更新!きのこで菌活。】

行事も多い夏休みは、健康的で元気に過ごしたいもの! 熱中症にならないためにも、毎日の食事から腸内環境を整えるきのこで菌活が効果的です。

今週の「きのこで菌活。」を読む ▶︎

今おすすめのきのこレシピ

きのこの具だくさん骨太オムレツ

ケガをせずに良いパフォーマンスを発揮するためにも、土台となる骨を丈夫にすることが大切です。きのこに豊富なビタミンDは、骨の主成分であるカルシウムの吸収を高める栄養素のため、チーズやしらすと合わせて骨づくりを助けます。また、卵に豊富なタンパク質は骨の材料となるので、成長期やアスリートの身体づくりにぴったりです。

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